ビバ沢渡「沢渡の茶大福」
ビバ沢渡は、高知県の仁淀川流域・沢渡地区の日本茶ブランド。以前この連載でご紹介した池川茶園から車で30分ほど離れた場所に位置します。
仁淀川の渓谷に沿って広がる沢渡は、かつては高知県内でも有数のお茶処でしたが、後継者不足から次第に生産量が減少。このままでは沢渡のお茶が消えてしまうと現代表の岸本さんが一念発起して高知市から戻り、今は亡き祖父に手ほどきを受け、2011年に茶の専業農家として独立しました。
以来、自分たちがつくるお茶を「沢渡茶」と名付けて販売。イベントなどでお客様と交流する中で、「沢渡茶でつくったお菓子を食べてみたい」との声をもらうようになったのをきっかけに、お茶スイーツの開発に着手しました。
今回お取り寄せしたのは、期間限定でJALファーストクラスの機内食に採用された「沢渡の茶大福」。新しい沢渡茶の楽しみ方を提案すべく、2018年に仁淀川町にオープンした「茶農家の店 あすなろ」でも人気ナンバー1のお土産です。
いい茶葉だからできる、茶葉を丸ごと食べる大福
コンセプトは「食べる沢渡茶」。岸本さんの「他にはない大福を作りたい」との想いが詰まった大福は、生の茶葉が餡にたっぷりと練り込まれ、切ったときの見た目もインパクト大です。
クリームの味ではなくお茶の味を感じられるよう使用しているのは、ほろ苦い茶葉とやさしい甘さの白餡だけ。山間部で収穫される高品質な茶葉を最大限に活かした、ビバ沢渡ならではのスイーツです。
茶大福はふんわりと柔らかい大福生地をたのしむ「しろ」と、まわりに粉茶がまぶされた「みどり」の2種セット。冷凍便で届き、常温で2−3時間解凍してから食べるのですが、大福生地が作りたてのように柔らかいことに驚きました。
「しろ」の方は、お餅の食感と、白餡の中の茶葉の歯ごたえを同時に味わえるのが新感覚。練り込まれた茶葉はほどよく苦みがあり、白餡のやさしい甘さと引き立て合っています。
「みどり」は大福全体に粉茶がまぶしてあり、食感も味も「しろ」とは異なる一口目。口に入れた瞬間に粉茶のほろ苦さを感じられます。「みどり」の方がより、お茶の味と香りが口いっぱいに広がり、お茶そのものを食べているような印象です。
まわりの粉茶はきな粉のようにこぼれそうに見えますが、大福生地にぴったりと密着しているので、手で触っても落ちる心配はありません。
開発にあたっては、お菓子のプロである高知県内の製造業者の協力を仰いだとのこと。茶葉の変色によりきれいな煎茶の緑色が出ないなど、パートナー業者には苦労をかけましたが、そのこだわりの成果が現れた逸品です。
「しろ」も「みどり」も甘さ控えめでお茶のほろ苦さを中心に据えた味わいなので、クリーム大福や甘みの強い大福が苦手な方にもおすすめです。
先人たちが守ってきた景色を繋いでいきたい
過疎化や高齢化の波が押し寄せている沢渡地区。危機感を覚えた岸本さんは、毎年増える放棄茶園を引き受けるだけでなく、2018年に「茶農家の店 あすなろ」をオープン。
「自分たちが作っている素晴らしい茶畑を見ながら、お茶を飲んだり山のごちそうを食べ、ゆっくりとした時間を過ごして欲しい」。四季折々の風景やこれまで続いてきた祭りなどの地域文化を守り、若者たちが集う場を作るためのチャレンジを続けています。
沢渡の茶業、そして文化を繋いでいくビバ沢渡の茶大福、ぜひお試しあれ!