日本茶インストラクター
協会とは?

日本茶インストラクター
協会とは?

日本茶に関する専門的な知識を持つ日本茶インストラクターの資格認定をしている「日本茶インストラクター協会」。そもそも、どのような目的で生まれどんな活動をしているのでしょう。同協会の専務理事・奥村静二さんに教えてもらいました。

日本茶インストラクター協会とは? 目的と主な活動

「日本茶インストラクター協会」とは、日本茶の普及活動を推進している特定非営利活動法人(NPO法人)です。日本茶の歴史・文化の継承や新たな茶文化の創造、また社会の健康・教育の向上に寄与することを目的に、日本茶をより多くの人に広く知ってもらうために国内外でさまざまな取り組みを行っています。

2021年4月現在、その会員は10代から70代以上まで約6,000人。同協会が認定している「日本茶アドバイザー」「日本茶インストラクター」の資格認定者のほか、活動の趣旨に賛同し入会金や賛助会費を支払うことで誰でも入会が可能です。海外で活躍する会員もいます。

 

【日本茶インストラクター協会 会員区分】

・日本茶アドバイザー会員(日本茶アドバイザー資格認定者):入会金5,000円/年会費5,000円
・日本茶インストラクター会員(日本茶アドバイザー資格認定者):入会金10,000円/年会費10,000円
・正会員:入会金100,000円/年会費10,000円
・賛助会員:一口50,000円・二口以上〜

「日本茶インストラクター協会」の主な活動内容は2つあります。ひとつは、「日本茶アドバイザー」及び「日本茶インストラクター」資格制度の運営。試験の実施や資格の認定、制度の普及促進はもちろん、資格取得までの教育や資格取得後の育成も行っています。

もうひとつは、消費者を対象とした日本茶の普及・啓蒙活動です。小学校での日本茶教室や、政府・地方自治体と連携した日本茶イベントの開催、また個人で講習会や教室などの普及活動を行う会員の活動支援も行っています。

 

 

「日本茶インストラクター協会」の発足までの経緯

そもそも、なぜ「日本茶インストラクター協会」が発足するに至ったのでしょうか? 同協会がNPO法人として設立されたのは2002年2月。しかし、1999年からすでにその構想は進められていました。大きな目的は、日本茶に関する“正しい知識”を広め、それを指導する人材を育成すること。

当時は、日本茶はあまりにも生活に密接したものであったために、日本茶について系統的にまとめられている文献や書籍はほとんどありませんでした。また、家庭においてもそれぞれ好みの淹れ方で日本茶は楽しまれており、美味しく淹れるための科学的根拠に基づいた情報はあまり知られていませんでした。

一方で国が主体となって農研機構では日本茶の研究は積極的に進められており、日本茶に関するデータは次々と明らかに。それらの裏付けられたデータを元に、日本茶の歴史、栽培・加工方法、淹れ方などの基準を定め、普及・発展させようと立ち上がったのが「日本茶インストラクター協会」です。

 

活動その1|日本茶アドバイザー、日本茶インストラクターの育成・認定

そんな日本茶の知識や文化を、消費者に伝える役割を果たすのが、日本茶アドバイザーと日本茶インストラクターです。それぞれの受験者・認定者数は年々増えており、2021年4月現在、全国に12,587名の日本茶アドバイザーと、4,839名の日本茶インストラクターがいます。

2つの資格の大きな違いは、知識レベルと実技試験の有無。日本茶アドバイザーは、日本茶に関する基礎的な知識を持った初級指導者、日本茶インストラクターはより専門的・実践的な知識を備えた中級指導者にあたります。

また同協会では、より多くの人が日本茶を学び両資格を取得できるための「日本茶アドバイザー養成スクール」「日本茶アドバイザー通信講座」「日本茶インストラクター通信講座」の運営を行うほか、資格取得後にも、会員の資質向上を目的とした研修会などを開催しています。

 

【日本茶アドバイザー】

日本茶に対する関心があり、消費者への助言や日本茶インストラクターのアシスタントとして適格性を備えた初級指導者。「日本茶を美味しく淹れたい」「日本茶について詳しく知りたい」という主婦や大学生から、日本茶インストラクターへのステップアップを目的とした人までさまざまな受験者がいます。

<取得方法 > 市販のテキストを用いた自主学習のほか、日本茶インストラクター協会が主催する「日本茶アドバイザー養成スクール」への通学、「日本茶アドバイザー通信講座」での学習後、日本茶アドバイザー認定試験を受験して資格取得を目指します。ただし、受験資格として「実技講習会」の受講が指定されているため、自主学習の場合は別途これを受講する必要があります。

<活動内容> 販売店での消費者への指導・助言、日本茶教室でのアシスタント、茶関連イベントでの案内役など多岐にわたります。

 

【日本茶インストラクター】

歴史、栽培、製造、淹れ方、鑑定など日本茶に関する専門的な知識や技術を持ち、消費者や初級指導者を指導するプロとなる中級指導者、いわば「お茶博士」。近年は、「日本茶文化を地域や次世代に伝えたい」という受験者が多く、資格取得後はカルチャースクールや小学校での講師や、日本茶カフェのプロデュースなどさまざまな場面で活躍しています。

<取得方法> 市販のテキストを用いた自主学習や「日本茶インストラクター通信講座」で学習の後、日本茶インストラクター認定試験を受験して資格取得を目指します。日本茶アドバイザー資格がなくてもチャレンジできますが、受験資格は20歳以上に限られます。

<活動内容> 日本茶教室の開催、学校や地域のカルチャースクール等での各種講師、通信教育添削講師、日本茶カフェプロデュース、日本茶アドバイザーの育成・指導など、より専門的な場で活躍しています。

 

【日本茶検定】

2つの資格以外に「日本茶インストラクター協会」では、より気軽に楽しく「日本茶」についての知識を身につけ、奥深さや魅力を再発見してもらうために、インターネットによる選択式の「日本茶検定」も実施しています。インターネット環境があれば、誰でもどこからでも受検可能です。

 

活動その2|日本茶の普及活動

「日本茶インストラクター協会」では、日本茶アドバイザーや日本茶インストラクターを含めた会員と共に、一般消費者を対象にしたさまざまな日本茶の普及・啓蒙活動を行っています。

・各種イベントの開催、参加、支援

学校やカルチャースクール、企業などで日本茶の淹れ方の講習会を開催したり、日本茶に関する各種イベントを実施しています。特に小学生を対象とした教室は、個人会員レベルから自治体主導のものまで幅広く行われており、年間3万人以上の児童が参加しています。

・政府機関との連携

農林水産省と連携した活動も行っています。農林水産省と公益財団法人日本農林漁業振興会の共催により1962年から開催されている「農林水産祭 実りのフェスティバル」への参加、農林水産省が取り組む「消費者の部屋」での日本茶講座開催、一般消費者を審査員に迎えた日本茶品評会「日本茶AWARD」の開催などが主な取り組みです。

・「日本茶AWARD」の主催

より多くの人に多種多様な日本茶の美味しさを伝えるために、2014年に新設した日本茶の品評会です。一般消費者や多分野のスペシャリストを審査員に招き、日本茶の本質である「飲む人が、美味しいと感じたお茶」の日本一を決定。煎茶や玉露はもちろん、ほうじ茶、ブレンド茶、二番茶、ティーバッグなどさまざまなカテゴリから、消費者にもっとも支持された茶葉を選びます。2018年にはフランス・パリ、2019年にはドイツ・ベルリンでも審査会が行われました。日本茶の新たな価値創造に寄与しています。

・世界に目を向けた日本茶の啓蒙活動

「日本茶インストラクター協会」では、歴史ある日本文化のひとつとして、各国から訪れた駐日大使に対して日本茶の歴史や情勢、味わい、手軽に実践できる楽しみ方などを伝えています。

・茶情報の収集、提供(茶論)

日々更新される日本茶の研究成果をはじめ、各種最新データを収集・提供しています。年に4回発行する同協会の会報誌「茶論(さろん)」では、あらゆる情報を会員に共有することで、さらなる知識・資質向上を図っています。

 

このように「日本茶インストラクター協会」では、個人会員から政府まで、さまざまな人・機関と連携して日本茶の普及活動を行っています。「日本茶についてもっと知りたい、学びたい」と思ったときには、まずは近くで開催しているイベントや、資格・検定の受検について調べてみるとよいでしょう。

 

お話を伺ったのは

日本茶インストラクター協会 専務理事 奥村静二さん

奥村静二(おくむら せいじ)。特定非営利活動法人 日本茶インストラクター協会専務理事。「日本茶AWARD」の立ち上げに携わり、国内のみならず世界各地で日本茶の普及活動に尽力している。

― 以下、奥村さんからのメッセージ。
「日本茶インストラクター協会では、確かに『日本茶のおいしい淹れ方』という基本は定めていますが、この方法が絶対というわけではありません。一番大切なのは、思いやりとおもてなしの心。正しい基礎知識を持つことで、地域の嗜好に合わせて加工方法を変えたり、その日の気温や相手の好みによって淹れ方を変えたりアレンジができるのが、日本茶のいいところです。同じお茶でもいろんな味わいが楽しめるようになります」

 

◆NPO法人 日本茶インストラクター協会
https://www.nihoncha-inst.com/

写真・吉田浩樹 文・山本愛理