消費者が日本一を決める
日本茶の品評会
「日本茶AWARD」

消費者が日本一を決める
日本茶の品評会
「日本茶AWARD」

日本茶に新たな価値付けをする品評会として近年注目されている「日本茶AWARD」をご存知でしょうか? 今回は「日本茶AWARD」について、発起人のひとりである、日本茶インストラクター協会専務理事・奥村静二さんに教えてもらいました。(写真提供:NPO法人 日本茶インストラクター協会)

「日本茶AWARD」とは?  消費者目線で選ぶ、日本一の日本茶!

「日本茶AWARD」は、より多くの人に多種多様な日本茶の美味しさを伝えるために2014年に新設された品評会で、農林水産省後援のもと「NPO法人 日本茶インストラクター協会」が主催しています。

今、日本茶は嗜好品として新たな価値を持ち始めています。そんな現代に適応した価値あるお茶を発掘・創造し、日本茶が持つ幅広い魅力を世界に伝えることが「日本茶AWARD」の目的です。

なんといってもその大きな特徴は、一般消費者が審査員を務めること。日本茶の本質である“消費者が「美味しい」と思うお茶”の日本一を決めるのが、「日本茶AWARD」です。そのため、従来の品評会では、第一の評価基準となっていた「茶葉の外観」は採点対象外。審査はすべて「味」のみで行われます。また、単種か合組(ブレンド)かにも制限がないため、茶農家のみならず、製茶卸問屋や販売店、日本茶カフェなどでも出品することができます。

煎茶、深蒸し茶、ほうじ茶など、さまざまな茶種を出品できますが、最終的に大賞となるのは出品されたすべてのお茶からひとつだけ。したがって、ブレンド茶、二番茶、ティーバッグなども、煎茶や玉露と並んで評価され、茶種の垣根を超えてもっとも支持されたお茶が大賞となります。

 

出品茶種

「日本茶AWARD」には、幅広い茶種の出品が可能です。たとえば2019年大会は、以下の12種が出品対象となりました。

① 普通煎茶(露地:全く被覆していない茶。以下同)
② 普通煎茶(露地以外:被覆した茶及び被覆した茶を含む茶。以下同)
③ 深蒸し煎茶 (露地)
④ 深蒸し煎茶 (露地以外)
⑤ 蒸し製玉緑茶 (露地)
⑥ 蒸し製玉緑茶 (露地以外)
⑦ 玉露
⑧ 釜炒り茶
⑨ ほうじ茶
⑩ 紅茶および後発酵茶
⑪ ウーロン茶および包種茶
⑫ フリースタイル茶 (上記11種に当てはまらない茶。たとえば、普通煎茶と深蒸し煎茶の中間の茶、多種の茶葉同士をブレンドした茶など)

12種の中には、有機栽培茶や輸出向き茶(輸出実績があるまたは、輸出相手国の食品安全法規制に適合している茶)も含まれるほか、本大会では特別参加枠として「ナチュラル・フレーバー茶」「水出し茶」の出品も募集されました。

 

「日本茶AWARD」の審査方法

審査は3段階で行われます。審査委員会による1次・2次審査で順に上位茶を選定し、そこで選ばれた上位約20点(プラチナ賞)が、3次審査(最終審査)および「TOKYO TEA PARTY 」に進みます。3次審査では、一般消費者による審査をもとに審査委員会での選考会議を実施。もっとも高評価を得たお茶が、「日本茶AWARD」の最高賞である「日本茶大賞」の称号を獲得します。

【1次審査】
茶葉の外観審査は行いません。2煎目も淹れ、香味や水色を総合的に判断し、5段階で評価します。
1次審査では、緑茶流通業者や生産家をはじめ、コーヒー・紅茶・中国茶の専門家や、各ジャンルのレストランシェフ、調理師学校の教師など、他の食品業種等の人々も審査員に加わります。

【2次審査】
2次審査でも茶葉の外観審査の採点はなく、嗜好で行われます。2煎目も淹れ、「香気」「滋味」「水色」の3項目を100点満点で採点。ただし茶種よって3項目の配点の割合は異なります。2次審査を経て選ばれた上位約20点が「プラチナ賞」を受賞すると同時に3次審査に進みます。

審査員による1次審査(写真提供:NPO法人 日本茶インストラクター協会

【3次審査(最終審査)】
最終審査は、全国7地域(うち東京は「TOKYO TEA PARTY」)で一般消費者が行います。2018年には仏・パリ、2019年には独・ベルリンでも審査会が行われました。一般審査員は公募で募り、各審査会当日、審査員はすべてのプラチナ賞のお茶を飲み、「もっとも美味しいと思ったお茶1点」に票を投じます。

 

全審査によって授与される賞は以下の通りです。
・日本茶大賞 1点
・日本茶準大賞 1点
・プラチナ賞 20点程度(2次審査後に選定)
・ファインプロダクト賞 複数点(2次審査後に選定)
・審査員奨励賞 複数点(2次審査後に選定)

日本茶大賞ほか、上位入賞茶から「農林水産大臣賞」「農林水産省生産局長賞」も選定されました。

渋谷ヒカリエにて開催された消費者による3次審査(写真提供:NPO法人 日本茶インストラクター協会)

消費者にも出品者にもメリットがある

「日本茶AWARD」は、“消費者が決める日本一美味しいお茶”ですから、より消費者に寄り添った品評会といえるでしょう。これまで日本茶にあまり馴染みがなかった人も、同じ目線で選ばれたお茶となれば身近に感じられ、日本茶に興味を持ったり購入したりするきっかけになり得ます。

一方で、出品者にとっても大きなメリットがあります。一般消費者やさまざまな食の専門家の声がダイレクトにフィードバックされることです。その時々の消費者の傾向や、地域・国による嗜好の違いも明確になるため、その後の製品づくりに大いに役立てることができます。茶業界の専門家と異なる視点や評価が得られることは、出品者にとってさまざまな刺激や気付きとなるのです。

 

お話を伺ったのは

日本茶インストラクター協会 専務理事 奥村静二さん

奥村静二(おくむら せいじ)。特定非営利活動法人 日本茶インストラクター協会専務理事。「日本茶AWARD」の立ち上げに携わり、国内のみならず世界各地で日本茶の普及活動に尽力している。

― 以下、奥村さんからのメッセージ。
「茶の専門家によって厳格に評価される従来の品評会も、もちろん大切です。ただ一般消費者にとっては、“よくできたお茶”よりも“飲んで美味しい、楽しいお茶”の方が、わかりやすく身近なものです。伝統を守りながら、新しい時代に合った価値付けをすることで日本茶を次世代に受け継いでいきたいと思います。ぜひ賞を獲ったお茶を飲んでみてください。審査員への応募もお待ちしています!」

◆日本茶AWARD
https://nihoncha-award.jp/

写真・吉田浩樹 文・山本愛理