日本茶の“多様性”を語る
「日本茶AWARD」
茶人対談

日本茶の“多様性”を語る
「日本茶AWARD」
茶人対談

茶種や単種・合組の垣根を超え、“消費者が「美味しい」と思うお茶”の日本一を決める品評会「日本茶AWARD」。時代に合った価値あるお茶の発掘から見えてくるのは、実に豊かな日本茶の“多様性”です。今回は、現代を代表する3名の茶人たちに2021年大会のプラチナ賞19点を味わってもらい、“日本茶の多様性”をテーマに対談を行いました。

お茶に関わるすべての人と消費者が参加し決める品評会「日本茶AWARD」

「より多くの人に多種多様な日本茶の美味しさを知ってほしい」と、2014年から始まった「日本茶AWARD」は2021年大会で7回目を迎えます。近年、日本茶は嗜好品として注目されるようになり、茶農家だけでなく製茶卸問屋や販売店などが個性あるお茶を製造・販売するようになりました。

本品評会最大の特徴は、それらお茶にかかわるすべての人が出品できるほか、一般消費者が評価に参加すること。2021年大会では、プロによる事前の一次・二次審査を通過した上位19点(プラチナ賞)を対象に全国で一般消費者による最終審査会「日本茶AWARDサテライトティーパーティー」を開催。茶種や単種、合組、二番茶、ティーバッグなどにかかわらず、あらゆる垣根を超えて消費者にもっとも「美味しい」と支持されたお茶が大賞となります。

 

茶人たちが語る、“日本茶の多様性”

全503点にも及ぶ応募の中から今年、見事プラチナ賞を受賞したのは、普通煎茶や和紅茶、煎茶ティーバッグに至るまでバラエティ豊かな19のお茶です(受賞茶一覧)。今回は、最終審査会と同じサテライトティーパーティー形式で3名の茶人にプラチナ賞受賞茶を味わってもらい、“日本茶の多様性”について対談を行いました。


写真左から
岡部宇洋(おかべ たかひろ)さん
静岡県出身のお茶プロデューサー。アートとお茶を掛け合わせるユニット「Tea of the Man」や、古民家日本茶カフェ「茶箱」(東京・南品川)等で活動。現在は茶畑の中でティーペアリングを楽しめるイベント「The Teas & Dishes」を立ち上げ中。

本間節子(ほんま せつこ)さん
お菓子研究家。日本茶好きが高じて日本茶インストラクターの資格を取得。自身のお菓子教室では日本茶を使ったお菓子作りや、お菓子と日本茶のペアリングなどを発信。

フローラン・ヴェーグさん
フランス人初の日本茶インストラクター。自身が手がける日本茶専門店「青鶴茶舗」(東京・谷中)では全国から厳選した単種の茶葉を中心に販売。作家ものの茶器などもそろえる。

 

ーまずは、今年のプラチナ賞受賞19点を味わって、率直な感想をお聞かせください


岡部さん(以下、岡)「僕は今年初めて『日本茶AWARD』のプラチナ賞受賞茶を飲ませていただいたのですが、出品者の皆さんが“個性を出す”ということにとても努力して取り組まれていることが伝わってきました。香りから『こんな感じかな』と想像した味わいや飲み心地を遥かに超えてくるものが多くて驚きましたね」

本間さん(以下、本)「そうですよね。私は過去にも審査茶を飲ませていただきましたが、今回もとてもバラエティに富んでいて、美味しく、そして何より楽しくいただきました」

フローランさん(以下、フ)「今年もインパクトあるお茶が多くありましたね。ガツンとした強いうま味があるものや、しっかり火入れをして香りを立たせたもの、萎凋の独特の香りがするものなど、ユニークなお茶にたくさん出会えました。皆さんの『賞を獲るんだ!』という意気込みを感じます」

 

ーどんな点に日本茶の多様性を感じましたか? 特にそれを表現していると思ったお茶を交えて教えてください。

フ)「僕は普通煎茶の中でも『晩生四天王』が印象的でした。初めは華やかな香りがするのですが、のどを通ると厚みのあるふくよかな味わいが感じられて、いい余韻が残る。4品種をブレンドしているようですが、単一品種ではつくれない茶師の技術が生んだ味だなと思います」

岡)「個性的な香りと味わいでしたね。一般消費者の方には『これが煎茶?』と思われる方も多そう」

本)「私は和紅茶に注目しました。『高千穂 紅茶 べにふうき』はレモンのような爽やかな香りとほんのりとした甘みがあって、しっかり抽出しても後味はスッキリ。これならポットサイズでも飽きずに美味しく飲めそうだなと。生クリームを使ったケーキなどとも合わせやすいですし、ティータイムのお供にこういう和紅茶があると、友人ともゆっくり会話が楽しめると思います」

フ)「ペアリングはもっと広がってほしいですよね。煎茶、ほうじ茶、和紅茶と、日本茶は本当に多種多様なので、スイーツはもちろん、フレンチや中華、エスニックまでどんな食事でも必ず合うものがありますから。コーヒーには真似できない日本茶ならではの懐の広さだと思います」

本)「お茶単体で高い評価を受けたものが、必ずしもペアリングでいきるかというと、そうでもないところも奥深いですよね」

岡)「可能性という意味では、僕は釜炒り茶やほうじ茶などローストの技法を取り入れたお茶は、おもしろいものがこれからもたくさん出てくるのではと感じました。『OSADA TEA ORGANIC KAMAIRICHA』をいただいた時、釜炒りらしい香ばしさの中にもどこか発酵の風味を思わせるものがあって、工夫次第ではこんな香りも引き出せるのだと驚きましたから」

本)「コーヒーやハーブ、スパイスが身近にある今の若い世代の方々は、香りへの関心も高いですよね」

岡)「ええ。そういう意味でも、釜炒り茶やほうじ茶は今の時代に合ったお茶。ローストが現代の日本茶の新たな価値のひとつになる気がします」

フ)「ただそんな時にこそ、クラシカルなものの存在は絶対に忘れたくない、と僕は思います。“多様性=新しさ・ユニーク”ではない。伝統的なものも含めて、日本茶の多様性です。今回でいえば『こだわりの天竜茶 輝』のような、山のお茶ならではの豊かな香りとほどよいうま味と渋味のバランスを持った『これぞ煎茶』ともいうべきものも、大切にしたいなとあらためて強く感じました」

岡)「すごく賛同します。確かに派手さはないけれど、かつての茶人たちが憧れていたであろう、いい日本茶の原点みたいなものを感じました。多様性って、“多様性をつくり出す軸”となるお茶があって初めて、そこからどう広げるかでさまざまな価値観が生まれると思うんです。まだ日本茶に馴染みがない方にはユニークなお茶を入り口にして、こういうクラシカルなお茶にも触れてほしいですね」

本)「同じように、私は身近な日用品としての一面も日本茶のひとつの価値だと考えます。近年は嗜好品としてシングルオリジンが重宝されがちですが、合組にしかできない美味しさや価値もたくさんあります。味に偏りがなく誰もが美味しいと感じられて、手軽に安定した味が出せる。それでいて価格も手頃。そうした職人の加工技術によってつくられる美味しさも大切にしたい。「八女茶 さえみどり」のように、甘みもありつつスッとのどを通るいい合組は、お菓子教室でふるまうとどんな年代の方にも喜んでもらえるんですよ」

 

ー今後の日本茶AWARDや多様になる日本茶に期待することは?


岡)「今回僕は、ティーバッグや二番茶でもこんなに美味しいものがあるのだと驚きました。一見マイナスの要素に捉えられていることも技術や工夫次第でプラスに変える力が日本茶にはある。個人的には渋味をうまく引き立たせたお茶などがあってもおもしろいなと思いましたね」

フ)「いいですね! どうしても嫌われがちですからね。僕はやはり、若い人にこそ、品種本来の特徴で直球勝負するようなクラシカルなお茶作りにチャレンジしてほしいなと思いました」

本)「日本茶AWARDは、美味しいお茶を知ることができるとてもいい機会だと思います。伝統的なものから斬新なものまで、いろいろなお茶に出会えます。ぜひたくさんの方に味わっていただいて、こうしてお茶について語れる仲間が増えれば嬉しいです」

 

12月4・5日「TOKYO TEA PARTY」にて大賞発表! ECサイトで先行予約販売も

2021年大会の「日本茶大賞」「日本茶準大賞」の発表・表彰は、2021年12月4日(土)・5日(日)に「JINNAN HOUSE」で開催される「TOKYO TEA PARTY」にて行われる予定です。プラチナ賞受賞茶が味わえるほか、アソートセット購入も可能。また同商品はECサイトでも先行予約購入できます。この機会にぜひ、多種多様な日本茶に触れてみてください。

 
◆日本茶AWARD 公式ECサイト
URL:https://awardshop.official.ec/

写真・吉田浩樹 文・山本愛理
撮影協力:思月園

Sponsored by 日本茶インストラクター協会