茶農家が直伝! 生葉から
煎茶や紅茶を作ってみよう

茶農家が直伝! 生葉から
煎茶や紅茶を作ってみよう

生の茶の葉から、手作り茶を作ってみませんか? お茶摘み体験などで持ち帰った生葉は、自宅で簡単に煎茶や紅茶にすることができます。創業100年以上を誇る老舗の茶園「横田園」の6代目・横田貴弘さんに、手作り茶の作り方を教えてもらいました。

お茶摘みのあとは、手作り茶にチャレンジ!

いよいよ新茶の季節。近年では、一般の方でもお茶摘み体験ができる茶園が増えています。なかには摘んだ茶の新芽を持ち帰れる茶園も多く、「自分でお茶を作ってみたい」と思われる方もいるのでは? そこで今回は、創業100年以上を誇る埼玉県狭山市の茶園「横田園」の6代目・横田貴弘(よこた たかひろ)さんに、自宅でできる手作り煎茶・紅茶の作り方を教えていただきました。

 

手作り煎茶の作り方

まずは煎茶の作り方です。「煎茶の製造工程 ー 生葉から煎茶ができるまで ー」でもご紹介したとおり、煎茶作りは主に「揉む」と「乾かす」の繰り返しで行います。いいお茶の目安は、出来上がりの茶葉の重量が生葉に対して1/5ほどになること。今回は10gの茶葉を作ります。

【用意するもの】

・茶の生葉(50g)
・ホットプレート(またはフライパン)
・菜箸
・竹ざる


1. 茶の葉を洗う

まずは、摘んできた生葉を水でよく洗い、水気を切ります。


2. 酸化酵素の働きを止める

低温(保温〜150℃)に熱したホットプレート(フライパンの場合は弱火)に茶葉を広げて入れ、菜箸で混ぜながら炒めるように加熱します。温度が高すぎたり、混ぜずに加熱したりすると焦げるので注意してください。

最初の加熱の目的は、熱によって葉の酸化酵素を失活させること。鮮やかな緑色を保つほか、青臭さを除く役割があります。

全体の水分が飛び、葉のまわりが少ししんなりとしてきたら竹ざるに上げます。

3. 揉む
葉を押しつぶさないよう、転がすように手でやさしく揉みます(※熱いので要注意)。

「粘土でお団子をつくるイメージで転がしてください。ガシガシと力を入れて揉んでしまうと、葉に傷がつき、淹れたときにえぐみが出てしまうので気をつけて。逆に、手のひらのまわりから葉がぽろぽろとこぼれてくるようなら、少し力が足りない証拠です」(横田さん)

葉の内側から水分が押し出され、表面にツヤが出て手にペタペタと吸い付くような感触になったらOKです。

4. 乾かす
葉をホットプレートに戻し再度加熱します。ここからは乾燥の工程です。
同じく低温に熱したホットプレートで、焦げないよう絶えず混ぜながら葉を乾かします。ツヤがなくなり、水分が飛んだらふたたび竹ざるに上げます。

5. 揉む
2回目の揉む作業です。先ほどと同じように転がすように揉み、中の水分を押し出します。葉全体の水分が均一になり、表面にツヤが出てきたらまたホットプレートに戻し、乾かします。

加熱してしんなりした葉は一見、乾いたように思えますが、表面の水分が飛んでいるだけで葉の内側にはまだ水分が残っています。揉むことで中の水分をしっかり出してあげましょう。

4と5を、7〜8回(約1時間)ほど繰り返します。少しずつ揉む力を強め、最後はしっかり力を入れて、内側の水分を押し出してください。

6. 完成!
爪で茎を強く押して簡単に折れるくらいまで水分が飛んだら完成です! なお、乾燥が足りないと感じた場合は、最後に様子を見ながら電子レンジで加熱するのもおすすめです。

 

 

手作り紅茶の作り方

実は紅茶も、製茶工程を変えるだけで、煎茶と同じ茶の葉から作ることができます。紅茶特有の香りや紅い色は、その製茶の段階で生まれるもの。昨今では各茶園の茶師が茶葉の状態を見ながらコントロールすることで、様々な風味の紅茶を作り出しています。

【用意するもの】

・茶の生葉(50g)
・ござ(すだれや網などでも。風通しのよい板状のもの)
・竹ざる
・キッチンペーパー
・ホットプレート(またはフライパン)
・菜箸

1. 茶の葉を洗う
まずは、摘んできた生葉を水でよく洗い、水気を切ります。

2. 葉をしおれさせる(萎凋 いちょう)
ござに、葉が重ならないよう薄く広げ、風通しのよい室内に一晩おいて葉をしおれさせます。

3. 揉む
葉を押しつぶさないよう、転がすように手で揉みます。こちらも、粘土でお団子をつくるイメージで。葉全体の水分が均一になり、手にペタペタと吸い付くような感触になったらOK。5分程度が目安です。

4. 発酵させる
できるだけ湿度100%に近い状態で茶葉を発酵させます。ご家庭の場合は、水で濡らしたキッチンペーパーに葉を包むか、お風呂など湿気の多い部屋で2時間ほどおきます。

「茶園にもよりますが、うちの紅茶製造の工場では、温度25〜28℃、湿度100%の環境下で発酵させています。一般のご家庭で湿度100%の状態を作るのは難しいと思いますので、湯を張ったお風呂場などがおすすめです。ただし、せっけんやシャンプーなどの匂い移りには注意してください」

5. 乾かす
最後に、低温(保温〜150℃)に熱したホットプレート(フライパンの場合は弱火)で加熱し、発酵を止めると同時に乾燥させます。温度が高すぎたり、混ぜずに加熱したりすると焦げるので注意してください。30分〜40分ほどかけて丁寧にゆっくりと乾かしましょう。

6. 完成!
爪で茎を強く押して簡単に折れるくらいまで水分が飛んだら、完成です! 手作り茶は、市販の紅茶のように細かく砕けていないので、熱湯で少し長めに抽出するとよいでしょう。

 

「摘んですぐの茶の葉が市場に出回ることはほとんどありません。生葉に触れる機会も、お茶作りをできる機会もめったにないので、ぜひチャレンジしてみてください!」と横田さん。

自分で摘んで自分で作ったお茶の美味しさは格別です。ただし、手作りのお茶はあまり日持ちはしないので、早めに飲みきりましょう。

横田園

埼玉県狭山市沢12-5
04-2959-6308
https://www.yokotaen.com/

写真・松島 星太 文・山本 愛理